インドネシアで法人設立する手順と費用 — PT PMAの設立を完全ガイド

インドネシアで事業を始める日本企業・個人にとって、最も一般的な法人形態がPT PMA(Perseroan Terbatas Penanaman Modal Asing / 外資系有限責任会社)。100%外国資本での設立が可能な業種も多く、ASEAN有数の市場規模を持つインドネシアへの進出手段として定番となっている。

ただし、最低資本金の要件や規制業種の制限、行政手続きの複雑さなど、日本での法人設立とは勝手が大きく異なる。2025年には投資調整庁(BKPM)の規則改正もあり、資本要件が変更された。

この記事では、2026年時点の最新情報をもとに、PT PMAの設立手順・費用・注意点を網羅的にまとめた。


PT PMAとは — 法人形態の基本

PT PMAの概要

PT PMAは、外国人または外国法人が出資する有限責任会社(Perseroan Terbatas)のこと。「PMA」は外国投資(Penanaman Modal Asing)の略で、投資調整庁(BKPM / Badan Koordinasi Penanaman Modal)の管轄下で設立・運営される。

PT PMAとPT PMDNの違い

項目PT PMA(外資系)PT PMDN(内資系)
出資者外国人・外国法人を含むインドネシア人・法人のみ
最低資本金IDR 100億以上の投資計画規定なし(事実上自由)
払込資本IDR 25億以上IDR 5,000万以上
業種制限ネガティブリスト/投資優先リストに準拠制限少ない
設立コスト高い低い

駐在員事務所(Representative Office)との違い

駐在員事務所(KPPA / Kantor Perwakilan Perusahaan Asing)は市場調査や連絡業務のみが許可され、営業活動や収益を上げる事業はできない。実際にインドネシアで商売をするなら、PT PMAの設立が必要。


最低資本金の要件 — 2025年規則改正の重要ポイント

2025年の改正内容(BKPM規則第5号/2025年)

2025年に投資調整庁(BKPM)規則第5号が施行され、PT PMAの資本要件が以下のように変更された。

項目金額(IDR)日本円目安
最低投資計画額Rp 10,000,000,000(100億ルピア)約9,400万円
最低払込資本金Rp 2,500,000,000(25億ルピア)約2,350万円

※為替レートは1円=約106 IDRで概算(2026年4月時点)。

重要な変更点

以前の規則では、KBLI(業種分類コード)ごとにIDR 100億の投資計画が必要だったが、新規則では1社あたりIDR 100億に変更。複数のKBLIを持つ会社でも、合計でIDR 100億の投資計画があればよいことになった。

資本金に含まれるもの

IDR 100億の投資計画には以下が含まれる:

  • 払込資本金(最低IDR 25億)
  • 土地・建物
  • 機械・設備
  • 運転資金

注意: 払込資本金は会社の銀行口座に入金後、最低12か月間は引き出し不可。ただし、この期間中でも事業目的(設備購入、事務所賃料、運営費など)には使用可能。


業種制限 — ネガティブリストと投資優先リスト

ネガティブリスト(Daftar Negatif Investasi)からの変更

従来の「ネガティブリスト」は、2021年の雇用創出法(Omnibus Law)により**投資優先リスト(Daftar Positif Investasi)**に置き換えられた。現在は大統領令2021年第10号に基づき、業種ごとに以下の4カテゴリーに分類されている。

  1. 優先業種 — 税制優遇あり
  2. 条件付き開放 — 外資比率の上限あり(例: 49%、67%など)
  3. 中小企業向け業種 — 外資参入に制限あり
  4. 閉鎖業種 — 外国投資不可

日本企業に人気の業種と外資規制

業種外資比率上限備考
製造業(一般)100%多くの製造業で100%外資可能
IT・ソフトウェア開発100%近年規制緩和
コンサルティング100%一部業種は制限あり
小売業67%規模による制限あり
建設業67%ライセンス要件あり
レストラン・飲食条件付き規模・形態による

**必ず最新のOSSシステムで自社のKBLIコードの外資規制を確認すること。**規制は頻繁に変更される。


PT PMA設立の手順 — ステップバイステップ

ステップ1: 事前準備・事業計画の策定

  • 事業内容の明確化(KBLIコードの選定)
  • 投資計画書の作成(IDR 100億以上)
  • 資本金の準備(IDR 25億以上)
  • 取締役(Direktur)・コミサリス(Komisaris)の選任

PT PMAの最低構成:

  • 株主: 2名以上(個人・法人可、すべて外国人でも可)
  • 取締役: 1名以上
  • コミサリス(監査役に相当): 1名以上

ステップ2: 会社名の予約

インドネシアの法務人権省(Kemenkumham)のオンラインシステムで会社名を予約する。

  • 会社名は最低3語で構成する必要がある(例: PT ABC Indonesia Technology)
  • 既存の会社名と類似していないこと
  • 名称予約の有効期間は60日間

ステップ3: 定款(Akta Pendirian)の作成・公証

インドネシアの公証人(Notaris)に依頼し、会社の定款(Deed of Establishment)を作成する。

定款に記載する主な事項:

  • 会社名・所在地
  • 事業目的(KBLIコード)
  • 資本金の構成(授権資本・発行資本・払込資本)
  • 株主・取締役・コミサリスの情報
  • 定款の内容はインドネシア語で作成(英訳を併記することが多い)

ステップ4: 法務人権省の承認

公証人が定款を法務人権省のAHU(Administrasi Hukum Umum)システムに登録し、**法人格の承認(SK Kemenkumham)**を取得する。

所要期間: 約3〜7日

ステップ5: 納税者番号(NPWP)の取得

法人格の承認後、税務署(Kantor Pelayanan Pajak)で法人の納税者番号(NPWP / Nomor Pokok Wajib Pajak)を取得する。2025年以降、OSSシステムとCoretax(税務システム)が連携しており、自動的にNPWPが発行されるケースも増えている。

ステップ6: OSSでのNIB(事業識別番号)取得

オンライン・シングル・サブミッション(OSS-RBA)システムにアクセスし、NIB(Nomor Induk Berusaha / 事業識別番号)を取得する。

  • OSSアカウントの作成
  • 会社プロファイルの登録
  • KBLIコードの選択
  • リスク評価(低・中・高リスク)に基づく事業許可の取得

NIBは以前のSIUP(商業許可証)やTDP(会社登録証)を統合したもので、これ1つで複数の許認可をカバーする。

所要期間: 約3〜5日(PT PMAは追加検証があるため若干長め)

ステップ7: 銀行口座の開設・資本金の入金

NIBとNPWPを持ってインドネシアの銀行で法人口座を開設し、払込資本金(最低IDR 25億)を入金する。

  • 主要銀行: Bank Mandiri、BCA、BNI、CIMB Niagaなど
  • 口座開設には取締役の本人確認(パスポート・KITAS)が必要
  • 資本金は入金後12か月間引き出し不可(事業使用は可)

ステップ8: 追加許認可の取得(業種による)

業種によっては、NIBに加えて追加の許認可が必要。

業種追加許認可
製造業工場登録証(TDI)、環境許可(AMDAL/UKL-UPL)
飲食業食品衛生許可、ハラール認証
建設業建設事業許可(SBU)
IT関連電子システム運営者登録(PSE)
輸出入通関識別番号(NIK Kepabeanan)、API(輸入者番号)

費用の目安

政府公式費用

項目費用目安日本円目安
会社名予約Rp 200,000約1,900円
公証人費用(定款作成)Rp 5,000,000〜15,000,000約47,000〜140,000円
法務人権省承認Rp 1,000,000〜3,000,000約9,400〜28,000円
NPWP取得無料
NIB取得(OSS)無料
会社住所のドミシリ証明Rp 2,000,000〜5,000,000/年約19,000〜47,000円/年

コンサルタント・代行費用

法人設立を自力で行うのは事実上難しく、現地のコンサルタントやエージェントに依頼するのが一般的。

サービス費用目安日本円目安
PT PMA設立代行(基本パッケージ)USD 3,000〜7,000約45万〜105万円
設立+許認可取得(フルパッケージ)USD 5,000〜15,000約75万〜225万円
バーチャルオフィス(ドミシリ用)Rp 10,000,000〜30,000,000/年約9.4万〜28万円/年

合計費用の目安(資本金除く)

設立手続きの実費+コンサルタント費用で、**USD 5,000〜20,000(約75万〜300万円)が一般的な相場。これに加えて最低払込資本金IDR 25億(約2,350万円)**が必要。


設立スケジュールの目安

フェーズ所要期間
事前準備・事業計画1〜2週間
会社名予約1〜3日
定款作成・公証1〜2週間
法務人権省承認3〜7日
NPWP取得3〜5日
OSS登録・NIB取得3〜5日
銀行口座開設・資本金入金1〜2週間
合計約6〜8週間

※書類不備や祝日(レバラン前後は行政が停滞する)により延びることがある。余裕を持って3か月程度で計画するのが安全。


よくある落とし穴・注意点

1. 名義借り(ノミニー)のリスク

外資規制を回避するために、インドネシア人の名前を借りて実質的に外国人が運営する「名義借り(nominee arrangement)」は法律で禁止されている。発覚した場合、会社の閉鎖や刑事罰の対象となる。

2. KBLIコードの選定ミス

事業内容に合わないKBLIコードで登録すると、後から事業許可が下りなかったり、外資規制に引っかかったりする。KBLIコードの選定は慎重に行い、専門家の助言を受けること。

3. LKPM(投資活動報告書)の提出義務

PT PMAは四半期ごとにBKPMへ投資活動報告書(LKPM / Laporan Kegiatan Penanaman Modal)を提出する義務がある。提出を怠ると事業許可の取消しリスクがある。BKPMは近年、未提出企業への取り締まりを強化している。

4. 労働規制

PT PMAでは、外国人従業員1名に対してインドネシア人従業員を一定数雇用する義務(Tenaga Kerja Pendamping)がある。また、取締役・コミサリスの全員を外国人にすることは可能だが、実務上はインドネシア人を含める方がスムーズ。

5. 税務コンプライアンス

法人税(PPh Badan)は25%(一部中小企業は22%)。月次・年次の税務申告が必要で、不備があるとペナルティが課される。信頼できる税理士(konsultan pajak)の起用は必須。


日本企業の進出パターン

パターン1: 製造拠点の設立

チカラン工業団地(ブカシ県)やカラワン工業団地など、日系企業が集積するエリアに工場を設立。JETRO(日本貿易振興機構)や現地の日本商工会(JJC)のネットワークが活用できる。

パターン2: 販売・サービス拠点

ジャカルタ市内にオフィスを構え、インドネシア国内市場向けの販売・サービスを展開。IT企業やコンサルティング企業に多いパターン。

パターン3: スタートアップ・新規事業

近年はフィンテック、EC、EdTechなどの分野でインドネシア市場に参入する日本のスタートアップも増加。OJK(金融庁 / Otoritas Jasa Keuangan)など監督官庁の規制に注意が必要。


まとめ

PT PMAの設立は、日本での会社設立と比べると資本要件が高く、手続きも複雑。しかし、OSSシステムの整備により以前よりはスムーズになっており、適切なコンサルタントを起用すれば6〜8週間で設立可能。

最も重要なのは、事前の計画と専門家の活用。KBLIコードの選定、資本金の準備、税務・労務コンプライアンスの設計を最初の段階でしっかり行うことが、後のトラブルを防ぐ最善策となる。

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情報ソース:

この記事はAIが生成し、人間の編集者がレビューしています。